スワローテイル・バタフライ
“言う事が聞けない悪いコは嫌いだよ。今度反抗したら尻尾切り落としてやるからな!”
“クゥゥン…”
そう…
兄貴はランを虐待していたのだ。
“兄ちゃんっ!!何やってんだよ!?”
見ていられなくなって
俺はランに駆け寄り、縛られていた四本の足をそこから解放してやると、庇うようにして兄貴の前に立ち塞がる。
“しつけしてただけなのに。そんな怖い顔すんなよ”
兄貴は叱られた子供のような顔になって俯いた。
“しつけ!?これの何処がしつけなんだよ!?やりすぎだろ!!”
“……ごめん”
“いや、俺に謝られても”
結局ランは、その後すぐによその家にもらわれて行った。
兄貴は本当に寂しそうに涙を流した。
三日間、食事も喉を通らない程にショックだったらしい。
そんなに大事なものなら…どうしてもっと大切にしてあげなかったんだろう?
どうしてもっと優しくしてあげなかったんだろう?
疑問だけが残るばかりで
その真意を確かめる術を見いだせなかった俺は
戻ってきた平和な日常の中で、ランのあの一件を忘れつつあった。
しかし…
その一年後。
兄貴が高校に入学してからすぐの頃…
悪夢は再び俺の前に蘇る。