スワローテイル・バタフライ
傷つける事でしか愛を確かめられないなんて
あんまりだ。
その想いは
受け止められる事もなく
伝わる事もなく
行き場をなくして
思い出と共に消えていく…。
そんなの、俺だったら堪えられないな…。
心からそう思うよ。
まぁ、理由はそれだけじゃないんだけど。
「……やっぱ言えねぇよな、兄貴が麻薬のプッシャーを本業にしてるなんてさ…」
彫り師やってるのは本当だけど、実際生活していける程の稼ぎはない。
だから、海外でモノを取り寄せてくるバイヤーから原価で仕入れて、それを高額で他に流すプッシャーをやっている。
兄貴の家にヤクザみたいな人達が出入りするのを見たことだって何度もあった。
お前に…
兄貴は似合わないよ、亜蝶。
「……ん」
「あ、起きた?」
寝ぼけ顔であたりをキョロキョロと見渡す亜蝶。
「あたし…あれから寝ちゃったんだ…」
どうやら記憶まではなくなっていないらしい。
「俺ももう上がりの時間だから。お前も帰る準備しろ」
「…げっ!もうこんな時間!?」
亜蝶が青ざめた顔で時計を見ると
時間は、もう夜の11時半を回っていた。
「うち門限九時なのに〜!絶対怒られるよぉ…」
「自業自得だろ?大体なんでカルーアであんなんなれんのか俺は不思議でしょーがねぇよ!」
「う…。てかあんたももっと早く上がりなさいよっ!高校生は10時以降働いちゃいけないんだからね!?」
「10時も11時もあんまかわんねーじゃん」
「そうゆう事じゃないのっ!」
「あーもーうっせぇなぁ!うちのオカンかお前は!ガミガミガミガミ…そのうちガミガミばばぁになんぞ!」
「はぁ?バッカじゃないの?」
こんなやりとりは俺らにとっちゃいつもの事だった。