スワローテイル・バタフライ
「あんたはあたしの何なのさ!?
父親か!?兄貴か!?
…そりゃ、兄貴分みたいなもんかもしれないけど、それならあたしの恋を優しく見守ってくれてもいーんじゃないの!?」
目線で火花を散らし合うあたしと創の間に浩太が割って入った。
「あーもーお前らいい加減にしろ!創も、落ち着けよ!大体あそこで働くなんてコイツが勝手に言ってるだけで、マスター通さなきゃ話になんねーよ」
「……………」
創はようやく冷静さを取り戻したらしく、浩太のその一言で急に大人しくなった。
「おまえらも悪かったな。コイツちょっと部活で色々あってイラついてんだよ」
「てめ、余計な事言ってんじゃねーよ!」
「はいはいすいませんね。ほら戻るぞ」
自分が悪い訳じゃないのにあたしたちに頭を下げて創を引きずっていく浩太の姿を見ると、大人だなぁと思う。
あいつ、そういうとこ凄いんだよね〜。
やっぱり社会の荒波に揉まれるとあんな風に余裕が出来たりするもんなのかな?
あたしはますますあのバーで働きたいという願望を心の中で膨張させた。
“そんな簡単に辞められるモンだったわけか、お前にとってのテニスって”
ふいに創の言葉が脳裏を過ぎる。
決して軽い気持ちでやってた訳じゃない。
全国だって本気で行きたいと思ってた。
だけど…
それ以上に夢中になれるものが見つかった、
ただそれだけの話なんだよ、創…。
あんたみたいに器用じゃないからさ、あたしはどちらかしか選べない。
流されたんじゃないよ?
これは自分で決めた事なんだから。
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