スワローテイル・バタフライ
「好きになるなとはいわねぇよ。けど、あんま心配かけんな」
「…………」
浩太があたしの頭をポンポンと撫でる。
「な?」
「………うん」
仕方なくあたしも頷く。
自分では…何処も変わってないつもりなんだけどな。
創の事も浩太の事も
変わらずに大事な人だと思ってるよ?
それだけじゃ
ダメなの…?
自分らしく
自分を持って生きていくって
難しいもんだね…。
心配かけるなって言われても
どうすればいいのか
わかんないよ…。
とりあえずその日は普通に部活に出たが、梓は先に帰ったらしく、姿が見当たらなかった。
まぁ部活って気分じゃないか…。
溜息をつきながら、いつも二人で練習していた場所に今日は一人で移動する。
壁打ちは一人でも出来るが、やっぱり何処か寂しいものがあった。
「あ…創」
校庭の隅っこで一人ぽつんとボールを転がしていた創。
何かをボケーッと考えているような様子だ。
胸が痛くなった。
その後ろ姿が
何だかとても寂しそうで
悲しそうで。
部活が終わった後は言い付け通り真っ直ぐ帰宅した。
ほんとだったら今頃…
龍輝さんと楽しくしゃべってるんだろーなぁ…。
時計を見ながらそう呟く。
「会いたいよぉ…」
目を閉じれば
優しい笑顔
甘い声
心を掴んで離さない
危険な香が
鮮明に浮かび上がる。
そんなお預け状態が続いた一週間後には、あたしは干物のように生気を失いかけていた。