スワローテイル・バタフライ
梓もまた同じで
「…あずたちこのまま終わっちゃうのかな…」
なんて目を潤ませながら呟いていたけど
正直あたしも今それどころじゃない。
放課後が待ち遠しくて待ち遠しくて、授業そっちのけであたしは龍輝さんの事ばかり考えていたのだった。
今日で寄り道禁止令は撤回されるんだ!
絶対に店に遊びに行ってやるんだからぁ!!
―――そして、放課後。
「うっしゃー!!」
あたしは興奮のあまり目を充血させながらそう叫ぶと、一目散で店に向かう。
部活は早退させてもらった。
あの店の開店時間に合わせたのだ。
なるべく早くから行って、一週間ぶりに会うその人に心を根こそぎ奪われてしまわないように
自分を見失ってしまわないように
心の準備をしておきたい。
カランッ。
薄暗い店内に入ると、
「あれ?誰もいないのかな…」
誰もあたしが来た事に気づいていないのか
浩太もマスターも出迎えてくれなかった。
ちょっと来るのが早過ぎたかな?
気になったものの、とりあえずそのまま歩を進めてみると…
「大丈夫?マスター…」
浩太の心配そうな声が聞こえてきた。
いたたたっとあの独特の口調で悲痛の声をあげるマスター。
何処か怪我でもしたのだろうか。
少しばかり考え込み、悪いと思いながらも、あたしは思い切ってカウンターの中へ入り、バックルームへ乗り込んだ。