スワローテイル・バタフライ
「ま、とりあえず行ってみよーぜ。後ろの友達も一緒に」
創がキラキラした笑顔を梓に向ける。
でた、女殺しスマイル…。
あたしは勝手にそう名付けて呼んでいるけど、当の本人はまるで無自覚。
「えっ!いいんですか!?」
ほら、梓の目の色も声のトーンも変わった。
乙女モード全開だ。
「ははっ。何で敬語なの?俺らタメじゃん」
「あ…そっか。遠藤君有名人だからつい」
「え?俺?有名人なの?」
「うん!ウチの中学でも西中サッカー部のツートップは知らない人がいないくらい!」
「大げさだなぁ〜。芸能人じゃあるまいし」
おや。おやや?
なんだかいい感じなんじゃないですかぁ〜お二人さん!
あたしが知る限り、創は初対面の人にこんなに進んで話しかけたりする奴じゃない。
梓の事を気に入ったみたいだ。
まぁ梓は気心知れた友達っていう色眼鏡を外しても普通に可愛いからね。
創もなんかまんざらじゃなさそう。
3人で仲良く浩太のバイト先に向かってる途中も
「創くんって純日本人??何か色素が薄い感じー」
「んーバレた?じーちゃんがフランス人なんだ」
「えーー!クウォーターだぁ!すごぉいっ!!」
「え。何が?」
なんて、ずっとこんな調子で二人ワールド。
あたしの存在、見えてますかー?って問いたくなっちゃうくらい会話に入る隙がない。
邪魔するつもりもないけど…もう少し気を使ってくれても…と一歩後ろから二人の背中を軽く睨んで、あたしは思った。