スワローテイル・バタフライ
act.2
【初恋】
浩太のお店は、人通りの少ない路地裏のこじんまりしたビルの中にあった。
まるでわざと人目を避けているようなひっそりとした店構えだ。
看板も、錆びた板にスプレーを噴射して書いたアルファベットが並んでいるだけで、“隠れ家”なんて聞こえのいい雰囲気ではなく
むしろ何処か悪い予感のする“たまり場”に近いような気がした。
「ね…ねぇ、本当にここであってるの〜…??」
「お前何びびってんだよ、別に普通のバーだから大丈夫だって」
「雰囲気くらいけど、良く見ると結構オシャレだねぇ?」
梓の言う通り、落書きみたいな看板が立つ寂れた外観とは裏腹に、入口には青と赤の蛍光ライトに照らされたOPENという文字の光る看板がかけられている。
木製の扉とそのカラフルな看板がアメリカンテイストを醸し出していてオシャレといえばオシャレなのかもしれない。
恐る恐るその扉を開いて中に入ると、その瞬間むわっとしたムスクの匂いが鼻をかすめた。
「いらっしゃいませー!何名さ…ま……ってなんだ、お前らかよ」
出迎えてくれたのは浩太。
黒い制服に身を包んだ彼は、いつもより何処か大人びて見える。
「浩太こんなとこで働いてたんだ…」
雰囲気に慣れないあたしが、挙動不審にあたりを見回しながらか細い声で呟いた。