月と太陽の事件簿6/夜の蝶は血とナイフの夢を見る
クラブ『ルノワール』であたしたちは店の一番奥の席に通された。

従業員(ホステス)が死んだとはいえ、店は通常通りに営業しているわけで、そこに警察が聞き込みに来れば、まぁこういう扱いになるだろう。

『ルノワール』ホステス小山洋子があたしたちの席に来たのは数分後のことだった。

水色のドレスもメイクも仕事用のそれだったが、その表情は緊張でこわ張っていた。

「洋子です。よろしくお願いします」

仕事の癖か、一度丁寧にお辞儀をした後、洋子はあたしと達郎の間に座った。

死んだ吉原しのぶと一番親しかったホステスがこの小山洋子だ。

年齢は吉原しのぶと同じ22歳。

高級クラブのホステスらしい、派手目だが整った目鼻立ちの美人である。

「昼間にもお話をうかがったと思いますが、もう一度吉原さんについて話を聞かせて下さい」

あたしはそう言ってから小山洋子に達郎を紹介した。

「民間協力員…の方ですか?」

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