月と太陽の事件簿6/夜の蝶は血とナイフの夢を見る
「では吉原さんが個人的な問題を抱えてたとしても、知る由はなかったということですね」

「それって、しのぶが恨まれてたり自殺するほど悩んでいたかってことですか?」

あたしは洋子の頭の回転の速さに感心した。

もっとも、こうでなければ高級クラブのホステスはつとまらないのだろう。

「あたしはどちらも心当たりはありません」

洋子はきっぱり言った。

「ここは女の職場ですから、やっかみはないって言ったらウソになりますけど、あたしもしのぶも妬まれるほど売れっ子じゃありません」

へぇ。こんな美人でもNo.1じゃないの?

厳しい世界だ。

「それに自殺するような悩みあったらとっくに店を辞めてると思います」

うーん納得できるかも。

あたしは心の中でうなずいてしまった。

「では吉原さんに関して何か印象に残っていることはありますか」

達郎の問い掛けに洋子はしばし考えこんでから

「変わったこと言うコだなって思ったことがあります」

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