一筋縄では逝かせない★
『お兄ーちゃーん!』
女の子は少し離れたところにいる男の子の方に走っていきます。
そしてそのまま抱き付きました。
『いって!なんだよ、桃子。』
お兄ちゃんと呼ばれた男の子もあまりの痛さに振り返ります。
『なんか理由がないとー。話し掛けちゃいけないのおー?』
女の子は茶目っ気たっぷりに口元に人差し指をつけ、答えます。
『桃子、お前…。そーゆう語尾のばして喋るのやめろって言っただろ?』
男の子は呆れた、とでも言うように片足に重心をかけ、腕を組みます。
『えー?なんでー?お兄ちゃんこそ、その偉そうな態度やめたほうがいいよー?』
『おまえのが偉そうだよ。』
男の子は付き合ってられない、と歩きだしました。
『待ってよー!お兄ちゃん!』
そういって男の子を追いかけますが、男の子は知らん顔です。
しかし、男の子の口元は幸せそうに微笑んでいました。
「また余計なこと思い出しちまったよ…。」
男は頭を抱えこみます。
「あいつがいるわけないのにな。」
そう呟いて男は空を見上げました。