一筋縄では逝かせない★
「んー…。思いだせー…!」
桃子はさっきから、しきりに犬に投げ付けられた石に手をかざしていました。
「おまえ、何やってんの?」
「私には全てが見えます。」
「…ばか?そんなことしてるヒマあったら、川探せよ…!」
いきなり石を投げつけてきたり、石に手をかざしたりと、最近の桃子にはさすがの犬も不安を感じます。
「川…りばー……こっちね!」
桃子はふふっと口元に微笑みを浮かべ、ビシッと指を差しました。
「じゃあ行こうぜ!」
なんのためらいもなく桃子の言うことを鵜呑みにする兄に、犬はすかさず突っ込みを入れます。
「でたらめだろ!てめえらほんと都合のいい兄妹だよな?」
「うっせー。黙れ。」
「黙りなさい。バカ犬。」
バカ犬とまで言われて犬が黙っているはずがありません。
再び言い合いになりそうになったとき。
「…川。…こっちです。」
鶴の一声。
男が桃子の指差した方向とは逆の方を差して静かに呟きました。
「(何考えてやがる…。)」
桃子、キジ、犬は疑いながらもついて行くしかありませんでした。