一筋縄では逝かせない★
「…」
男と鬼の足音だけが聞こえ、沈黙が続きます。
「―ぃたっ…!」
「どうかされたんですか?」
「はは、この草で腕を切ってしまった様で…」
鬼の腕にプツリと血が溜まり、それは次第に一筋に流れていきました。
「手当てを…」
男はしゃがみ込み、鞄から救急道具を出していきました。
「―?桃印…」
「え?あぁ、これですか」
男は鞄の中に視線をやる鬼を一目見て、鞄からそれを出しました。
「これは我が家に…と言っても、若のですが。に代々受け継がれている鉢巻きと旗です。だから桃印があるんです」
「どこかで見た記憶があったので」
「あの城はここら辺では有名ですから、見た事があるかもしれませんね」
「あぁ、それで…」
鬼は桃印の鉢巻きと旗を見つめながら小さく頷きました。
「はい、出来ました。気を付けて下さいね」
「ありがとうございます」
「では、進みましょうか」
男は鬼の一歩後ろを歩いていきました。