一筋縄では逝かせない★
「―乗ったのはいいですけど…暇ですね…」
「はい…こう…景色を眺めながら…」
そこで男は言葉を切りました。
「いや、そんな悠長な事言ってる状況ではありませんよ」
鬼は、はっとして、
「…僕とした事が…すみません。またトリップしてしまいました…。男さんとこうしている時間なんだか楽しくって」
「…」
「どうかしましたか?」
「いえ…お気になさらず」
男が話した後はいつも沈黙になります。
「取り出したるは、このオール!」
「!」
「これで先を急ぎましょう」
男は微笑みながら鬼にオールを渡しました。
「はい!」
「(どうしてこんな人の機嫌とりみたいな事してるんだ…)」
男は景色なんか目に入りませんでした。