一筋縄では逝かせない★
「この森、こんなに広かったんですね…」
「これでは迷う訳です」
さっきまでの騒動が嘘だったかの様に今はとても平穏無事です。
「漕ぐの交代しましょうか?」
「まだいいですよ。いくらか漕ぎ易いですし」
森はとても静まりかえっていて、雰囲気を壊すのが勿体無い気がしました。
「…」
「…」
深い沈黙に耐えかねた男はついに鬼に話し掛けました。
「鬼さんは、好きな方とかいらっしゃるんですか?」
「な!何を言い出すんですか〜。い、居る訳無いじゃないですか〜!な、何をい、一体…」
「そんな、またまたー」
「おなごにうつつを抜かしてる暇なんてありませんよ〜」
「そんな、またまたー」
ドン☆と男が小突いたところ、軽くしたつもりが、
「わあ!!」
ボチャンッ
「ちょ、何してくれてるんですか!…わ、私は実は泳げないんで…」
ブクブクブク…
「―鬼さん!?」
「このオールに掴まって下さい!!」
「あ、ありがっと…」