一筋縄では逝かせない★
「いえ…。特には。何もないですよ。」
男はにこやかな笑顔を携えて答えます。
「私は、私が聞いたことの答えしか聞くつもりはないわ。」
とんだわがまま娘です。
桃子はそのまま視線をつーっと滑らせました。
「さーあ。早く答えなさいよ。」
楽しげに、そしてまた、儚げに薄い笑いを浮かべて桃子は問います。
「答えないなんて。…許さないから。」
桃子はくるっと後ろを向いて足元を見ました。
「桃子さんは、知っていると…。」
「なにを?」
「私が桃子さんに尋ねたことの理由を、ですよ。やっぱりそこは兄妹ですね。…知っているのに知らないふりをするなんて…。」
男は確信したように呟きました。
「お兄ちゃんに言うつもり?…ほんとのこと。」
「若には…。時がきたら。」
「許さないわよ。」
桃子はキッと男を睨みました。
その眼には涙が光っていたこと、そして、それをおばあさんが聞いていたことに男は気が付きませんでした。