一筋縄では逝かせない★
「甘ったれるんじゃねぇよ」
お頭は兄を叩いた手をゆっくりと下げました。
「…お前…っ」
兄は眉を寄せ、お頭を見ました。
ざわついた空気に、
「どうした?」
と犬を始め、寝ていた者達が起き出しました。
すると、
「―お頭…っ!」
突然一人の鬼がお頭の腕に掴まってきました。
「何だ」
お頭はすがる様な目で自分を見る鬼に向き合いました。
その鬼は、一人島を飛び出し、兄達と行動を共にしていた鬼でした。
「もういいじゃないですか」
そんな事を言いたくて、口をパクパクとさせるも、言葉になりません。
「(自分が口出ししたところで…)」
そんな思いもありました。
一向に何も言わない鬼を不思議に思い、いつの間にか心配そうな目になっていた様で、
「すみません…」
と鬼は何もしないまま、謝りました。
心配というより、お頭は不安で落ち着きをなくしそうでした。
けどこの鬼の所為ではなさそうです。
「(まだだ、少し…あと少しだ…)」
と何かを呟いていました。