一筋縄では逝かせない★
―ダダダダッバンッ
ある古い城に足音と襖を勢いよく開ける音が忙しなく響きました。
「―と、殿様…!殿様!!」
男は慌てて部屋へ飛び込んで来ました。
その身なりはこの城にはあまり似つかわしくない、古ぼけたものでした。
けど城も城で栄えているとは言えず廃れて見えました。
「…何だ…」
殿様と呼ばれた男は、ゆっくりと布団から身を起こしました。
「…無理はなさらないで下さい!そのままで結構ですのでっ」
またも男は慌てて、殿様を布団へ寝かせました。
「…そうか…で何用だ?」
殿様は天井を見つめながら言いました。
「は、はい!…その…若様が見付かりました」
「そ、それは誠か!…ゲホッゲホッ」
「殿様…!」
男は起き上がった殿様の背中をさすりました。
「…すまん…」
「いえ、ここまで回復なされただけでも」
そう言うと男は、申し訳なさそうに小さく咳をする殿様の背中をさすり続けました。