一筋縄では逝かせない★
「殿様、もうすぐ船が参ります。」
「ああ。悪いな。」
「いえ…。」
すまなそうに謝る殿様に、男は少し、辛そうな顔をします。
「殿様…。これは今じゃなきゃいけませんでしたか?今の殿様のお体では…」
「いつかやってくることだと、言わなかったか?」
殿様の顔付きは変わりません。
「…はい。すみません。」
「そう心配するな。謝りにいくだけだと、言っただろう。」
その時。
殿様の言葉を掻き消すように、船がこちらに向かってやってきました。
そして、殿様たちの前で止まり、船長が顔を覗かせます。
「お前さんたちか?今日鬼ヶ島に行くと言う奴らは…。」
「ええ。そうです。」
「じゃあ乗り…な…って…。」
船長と殿様はお互い顔を見合わせて声を上げました。
「お前は…っ。」
「あの時の…。」
「うっ…。」
途端、殿様が苦しそうにその場にうずくまりました。
「殿様?!」
「とりあえず船に乗せるんでい!話は後だ!」
雰囲気が一変したことに、気付いてか気付いていないのか、ここに吹く風が少し強まりました。