一筋縄では逝かせない★
「…っはっ!お父様!!」
兄は殿様らしき人のすぐ傍までたどり着くと、着物の裾をしっかりと握り締めました。
「お…お前は…どうして…っ…危ないじゃないか…」
「お父様こそ!もう随分身体が冷えてしまっているではないですか!!」
「いいのだよ、どのみち私はもうそれほど長くはない…私のことなど気にせず、お前は自分のことを大切にしなさい」
「…っ!」
―何言ってるんだよ。
兄は小さく呟きました。
「…んなの無理に決まってるじゃないか!俺はあんたの息子なんだよ!」
「…!?」
今までに向けられたことのないきつい口調に、殿様は怯みました。
その瞬間。
「…乗ってください。」
兄は殿様に背中を向け、
「あぁ…」
殿様は、お前には敵わないな、と誰にも聞こえないように呟いたのでした。