一筋縄では逝かせない★
「大丈夫ですか。」
強めた口調は変わらず。兄は殿様に尋ねます。
「ああ。大丈夫だ。すまなかったな。」
兄は背中から聞こえる弱った声に胸が苦しくなりながら泳ぐスピードを速めました。
「…もうあんなこと、言わないでくださいね。」
周りの波の音で兄のその言葉は聞こえたのか聞こえてないのかは分からないけれど。
殿様は少し、表情を緩めました。
「あー!お兄ちゃんにおとう…さま…?」
みんなのもとに戻ってきた兄と殿様は桃子の声で我に返ります。
桃子はまだ、お父様と呼ぶのには慣れないようです。
「よかった。」
周りから口々に聞こえる安心の声に、殿様は感動しました。
「みんな、悪かった。」
そう盛り上がってると、キジがぽつりと呟きました。
「あの家来さん、どうしてのぼってこないんでしょうか。」