一筋縄では逝かせない★
「…」
「あ…こいつも寝ちまったよ…」
猿は切り株に座ったままこくりこくりと眠り始めた鬼に気付いて叫ぶのを止めると、ふっと微笑みました。
「こいつ…ずっとゆっくり休むなんてできなかったんだろうなぁ…」
おじいさんが着ていた暖かそうなちゃんちゃんこを、猿は剥ぎ取って鬼の肩に掛けてやります。
「悪ぃなじいさん。でも…分かってくれるよな?」
猿は穏やかな表情で二人を見つめました。
−その時。
「…うぅ…っ」
鬼が突然苦しそうな呻き声を上げました。
「…っ!?」
猿が慌てて鬼の顔を覗き込むと、
「こいつ…」
鬼の頬を一筋の涙が伝いました。
「島を滅茶苦茶にされて…仲間を殺されて…辛かったんだろうな…」
猿は呟きながら、ふとさっきの鬼の言葉を思い出していました。
―「何か泣いてるみたいだったから…」
「あーもう、やっぱ訳分かんねぇわ…」
猿は空を見上げて溜め息をつきました。