一筋縄では逝かせない★
「―若…っ」
草を割って現れたのは、品の良さそうな男でした。
「だ、誰だお前!」
犬はおばあさんをかばう様に身構えます。
「わわわ若は何処ですか!?若をご存知ありませんか!?」
男は犬に掴み掛かりました。
さすがの犬も動揺し、
「少し落ち着けよ…」
と男をなだめさせます。
男が落ち着いたところでおばあさんが、
「おじいさん見掛けませんでした?」
と、いきなり。
「申し訳ありませんが…見掛けませんでした」
「そうですか…何処をほっつき歩いてるんだか…」
おばあさんは深くため息をつきました。
「すまねぇが、俺達もその若とやらは見てない」
「そうですか…」
男もため息をつきました。
「はあぁ〜…」
二つのため息が重なり、重苦しい空気が漂いました。
誰でもいいから早く来ないかなと犬は思いました。