一筋縄では逝かせない★
「今ごろ大騒ぎだろうな…。ま、この俺様を見付けるなんて無理があるけど。」
男はにっこりと笑います。
「―若!」
少し遠くでそんな叫び声が聞こえました。
「やっべ!」
男は焦りながらも、音をたてないように急ぎます。
「もうここまで来てんのかよ!?」
やばいやばいと、さっきよりも足を速めます。
「あー。やっぱ訳わかんね。」
「はあ?!」
またしても、どこからか声が聞こえてきました。
「この森…。何なんだよ?何でこんなに…!」
―ばれたらまずい。
だれにも聞こえないように男は呟きました。
「若あ!」
まだ叫んでいる声が聞こえますが男は知らないふりをして歩いていきます。
「…なんで追いかけてくんだよ…。」
男は一瞬、辛い顔を見せました。
「っ!…なんで…今。思い出すんだよ…。」
そしてまた一瞬。
男は泣き顔を見せたのでした。
「…フッ。俺らしくねえじゃん。こんなの。」
しかし、男の目からは涙がこぼれていました。