一筋縄では逝かせない★
「ふーん。」
桃子は犬の歩みを制するように声をかけます。
「なるほどね。」
またまた犬は頭に疑問符をのせました。
「もしかしてと思うけど。」
「(早く言えよ。)」
桃子はふふんと笑って犬に問いました。
「あんた、あたしのこと好き「じゃねえよ。」
犬は空気を読みます。
「だからあたしのこと追い掛けて「きてねえよ。」
しかし桃子も譲りません。
「もしかして、結婚式の話しにきてくれ「ちげえよ。」
桃子の妄想はとまることを知りません。
「けど、残念ね。まずはおじいさんを探さないとそんな話もできな「しねえよ。」
桃子はまたうふ、と笑って、
「だ・か・ら」
と口を開きました。
「ごめんあそばせ♪その話はおじいさんを見つけてから後ほど。」
最近マイブームのこの言葉と可憐なお辞儀をつけて、桃子はチャーミングに走りだしました。
「…あのガキ!どこまでつるつるな脳ミソ持ってやがる!」
犬も後を追います。
しかし桃子の背中を見付けるのに、時間はかかりませんでした。
「おい!てめえ。ふざけんじゃねえよ。」
止まっている桃子に犬は声をかけます。
…が。
「ない。」
ひきずってきた跡は、ここで終わっているのに、おじいさんの姿はありませんでした。