プライベート・スカイ
沈黙を遮って、帽子男は言った。…サラッと。

「ブハッ…えっ、なっ、なっ…」

空耳…ではなかった。即座に肯定もできず、あたしは動揺していた。

「俺知ってんだー、穂貴が妹と付き合ってたって話し」

「ええええっ!?なん…それ、お兄ちゃんが…」

「もちろん穂貴から聞いたんだ。'黒くてブサイクだけど可愛い妹なんだ'とか言ってた」

「…」

──'黒くて'
──'ブサイク'

──'でも可愛い'

…お兄ちゃんなら言いそうだ…てか、よく言われた気がするし…

「会って、なるほどって思った」

「ああ…黒くてブサイクってトコっすか」

アズマは笑い出した。

「まぁいんじゃねーの?穂貴のストライクゾーンに入ってんだから。ちょっとマニア方面にズレてるけど」

「…ありがとうございます」

なんかフォローされてる気がして、あたしはお礼を言ってしまった。

変な感じだけど。

アズマはBMWのスピードを更に上げた。

「…穂貴は…」

「…眠ってる。もう何ヶ月も。ね、アズマさん何か知ってるんでしょ?」

「…」

「SweetPainってなに?アレのせいでお兄ちゃんは眠ってるの?佳依って何者?」
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