プライベート・スカイ
ヤバ…っ!!!!
止めようと彼女の手を掴む前に、美夜は持っていた包丁を横に引いた。
「痛っ…!!」
「バカっ!!お前なにやってんだよ!!」
慌てて彼女の手から包丁を取り上げ、切った手首を見た。
…幸い深い傷ではなく、血は出ているけど病院に行ったりするほどのものではなかった。
それでも確認する。
「大丈夫か!?」
「痛い…痛いよぉ…」
傷口を押さえながら美夜は泣いた。
死ぬほどのものではなかったと安心すると同時に、怒りが込み上げてきた。
「ふざけた事するな!」
「だって死にたい…」
──痛くて深く切れなかっただろうに。
美夜が本気で死ぬ気だったかどうかは分からない。
でも、一度決断したオレの心を揺さぶる材料にはなった。
少なくとも──美夜にそんな思いをさせた罪悪感がある。
「…バカな事言ってないで、向こう行こう」
美夜をリビングのソファに座らせる。
「とりあえず落ち着くまで…居るから」
「透依…」
美夜はオレに抱きついてきた。
ほんの少し前だったら振り払えた腕も、今はためらってしまう。
「お願い、ずっと一緒に居て…じゃないと、私…自殺するかもしれない…」