プライベート・スカイ
脅迫にも似た言葉。そうまでしてオレを繋ぎ止める理由は分からない。

こんな男なんて、こっちからお断りだ!って言えば済むのに

…いや、オレが美夜の立場だったら同じようにすがるかもしれない…

そう考えてみると気持ちの切り替えは簡単ではないだろう。

正直、オレはどうすればいいのか分からなくなっていた。

愛情はもうないのに、彼女の髪をなでると、美夜は頭をオレの胸に委ねた。

「透依…私だけを見て…こんなの、きっと透依は騙されてるだけなんだから」

オレを掴んで離さない腕。
指先から必死さは痛いほど伝わるけど…急に吐き気がした。

全身全霊でぶつけられる美夜の愛情が気持ち悪い。

「悪い…美夜、トイレに行きたいんだ」

「気持ち悪いの?!大丈夫?ついていこうか」

「一人でいい…」

ガマンできなくなり、トイレに行った途端に胃液まで全て吐き出した。

涙まで出てくる始末。

──レイナ…

どうしよう。きっと美夜を説得するのに時間がかかる。

きっとレイナは不満に思うだろう。

簡単じゃないとは思ってたけど、まさか美夜があんな事するなんて…あんなに弱い姿を見せるなんて思わなかった。

オレは苦しくて泣いていた。
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