プライベート・スカイ
そう。
彼はSweetPainの顧客だった。

'一本'はボトルの本数ではなく、'一袋'のこと。

一袋は五錠入り。

ボトルと、薬を持って私は席に戻った。

「お待たせしました」

そう言いながら、お酒を作りさりげなく彼に商品を手渡す。

「やっぱレイナが入れてくれた酒が一番旨いな」

彼は満足そうに言った。

決して安い薬ではない。だけど性能は良くて、副作用も少なく常習性もないと判るとハマる人もいる。

この人なんかは典型的かもしれない。
収入はあるけど、仕事にストレスを感じていれば

手を出したくなるのはちょっと分かる。

みんな夢を見たがっているのね…

現実から逃げたいと思うのは、私も同じ。

彼は頻繁に買いには来ないけど、私にとっては大切なお客様。

キャバ嬢としての私にもお金を落としていってくれるし。

顧客の中でも上客の方よ。



ハァ…
私…いつまでこんな事してるのかな…

辞めなきゃって思ってるのに、なかなか佳依に言えないでいるし

透依の為にも辞めたいのに…ダメだなぁ、私。

彼に秘密がバレないうちに、辞めなきゃね。


米山さんが帰るとすぐにまた指名が入った。
なんか今夜は忙しいね。
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