プライベート・スカイ
まだ仕事の最中だった。

閉店まで、まだ一時間以上はあるのに
あたしは店から逃げ出した。

そんで

メチャメチャ走った。

体力もないしトロいあたしだけど、夢中で走ってると

見慣れたBMWが停まっていた。

あたしが足を止めてドアの前に立つと、中からアズマが出てきた。

「なにしてんの?!お前。まだ仕事中なんじゃねーの?」

「アズマぁ…」

アズマの顔を見た途端何だか分かんないけど、今までガマンしてきたものが溢れ出した気がした。

堪える事もできずに、あたしは泣きながらアズマに抱きついた。

「なんだよ、どした?客に胸を触られたのに金貰えなかったとか?」

「そんな事あるかぁ!?アズマのバカぁ!」

気をつかってワザと冗談を言う優しいアズマがムカつく。

「悔しいよぉ…
あたし、何にも出来ないの。無能だし

お兄ちゃんさえも救えないの…」

アズマはずっとあたしを抱きしめ、頭をなでてくれた。

「雨峰。俺の彼女になるか?」

「え?」

思わず顔をあげると、アズマがキスしてきた。




「──ア…ズマ…」

遠くで
あたしじゃない、誰かがアズマの名を呼んだ。

振り返ると

レイナちゃんが立っていた…
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