プライベート・スカイ
鳴っていたのはオレの携帯。

出るべきか迷っていると、彼女が気をつかって言ってくれた。

「出た方がいいんじゃないですか?こんな時間だし。あっ、もしかして…」

──'彼女からですか?'と続きそうだったが、まり子は黙った。

この着信音はレイナじゃない。アイツがかけてくるわけないしな。そう思ってポケットから携帯を取り出すと

佳依からの電話だった。

「…弟からだ。ちょっとゴメンな」

オレはまり子に背を向けて電話に出た。

珍しいな…佳依が電話してくるなんて。

「もしもし」

『透依?俺、俺。佳依だけど』

「なんだよ?こんな時間に。急用か?」

『母さんがケガをした』

「はっ?!な、なんで」

『事故だよ。自分から車の前に飛び出したんだ』

…『また』か…

母親がケガをしたって電話をしてきたのに佳依は冷静で

それを聞いたオレもまた冷静だった。

これで何度目だろう。母さんが何度、死のうとしたか憶えてないくらい

何度も自殺を図った。

今度こそ

「死にそうなのか?」

『いや、腕の骨折。あとは打撲』

「そうか…」

『また』死にそびれたんだな。

不幸な母親は、なかなか天国には行けないでいた。
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