プライベート・スカイ
『どうする?帰ってくる?別に生きてるから帰って来なくてもいいと思うけどさ

親父が連絡しろって何度も言うから──』

「あー、うん…一応、顔見に行くかな。それで母さんも満足するだろ」

『あ、そう。分かった。じゃ、それだけだから』

用件以外は何にも話さず、オレ達は電話を切った。

「…青山さんって弟が居るんですか?」

後ろで電話が終わるのをずっと待っていたまり子が、オレの背中に声をかけてきた。

「まぁな。あんま仲良くないけど」

「お家からの電話だったんですね」

「うん、お袋が事故に遭ってケガしたって」

「えっ!?大変!!それじゃ早く病院に行かなきゃ!!」

「でも飛行機も新幹線も動いてないから、明日にするよ」

「あ…そうですよね…東京。すぐ帰れないなら余計心配ですね?」

「今すぐ死にそうってワケじゃないから大丈夫だよ」

「青山さん、大丈夫ですか…」

彼女はそっとオレの手を握った。
オレを心配してるらしい。

別に平気なんだけど、さすがに'慣れてる'とは言えなかった。

「ゴメンな、オレ帰る」

「はい。明日…気をつけて行ってきてください。あの…夜とかメール送ってもいいですか?」
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