プライベート・スカイ
──誰だって本当の事を知るのは怖い。

知らないから幸せでいられる事もある。

知ってしまって、裏切られた気持ちになるなら…もうレイナには会わない方がいい。

だから、こっちに戻って来ていても連絡したいとは思わなかった。

とにかくオレは実家に帰った。まずは母さんの様子を見なければ。

タクシーに乗って家に戻ると、松江さんが驚いていた。

「あらまぁ!透依さん!帰ってらしたんですか」

「昨日、佳依から電話もらってね。母さんは?」

「お部屋で休んでます。腕の骨折もそうですが、あちこち腫れたり傷が痛んだりして

昨夜はあまり眠れなかったようですよ。先ほど覗いてみたら眠ってましたが…」

「そっか。親父や佳依は?」

「お仕事です」

…だよな。母さんが事故に遭ったからと言って側にいるような奴らじゃないし

多分、母さんが死んでも仕事してそうだよな。

「分かった。オレ母さんの様子見てくるよ」

「はい。後でお茶いれますね」

母さんの顔を見るのは久しぶり。
いつも部屋に閉じ籠って、食事も一緒に取らないし

家族としての繋がりなんて何にもないんだ。

産んだだけの母親。
戸籍上、存在してるだけの妻。
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