プライベート・スカイ
佳依は素早く車を発進させた。

炎にまかれ、黒い煙をあげて消えていく自分の家を、私はサイドミラー越しに眺めていた。

不思議と涙は出てこない。
そのかわり諦めと一緒にため息が溢れる。

「…どうして私が実家に来ると思ったの?」

「火事だって家族から電話がいくんじゃないかと思ってさ。お前ドコに居るのかわかんなかったし」

「実家に来たのは偶然よ。だけど連絡もらってから来たんじゃ間に合わないと思うし
…あの人達はわざわざ連絡なんかしてこないと思うし」

「でも来たじゃん」

「だから偶然なの。佳依もここに来たのは偶然だったの?」

「いや?絶対に来ると思った。つーか、呼んだ」

「…?言ってる意味がわかんないわ」

そう聞くと佳依は後部座席を指さした。

後ろには薄くて黒いバッグがあるだけ。

「なに?何か入ってるの?」

「ノートパソコン」

…!?

千夏の言葉を思い出した。
ネットで私の個人情報が晒されている、と。

「ちょっと待って…まさか…そんな…」

「勘がいいな、レイナ」

「佳依が私を…晒したの…?」

「ネットを見た奴らがレイナに制裁を与えるように煽ってみたらさーホントに火事になってたし」
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