Cross
男女の叫び声
物が壊れる音
時々が毎晩にかわり
いつも布団の中で震えてた
ある日を境にとうとう父は家に帰っては来なくなった


「ねぇママ?パパはいつかえってくるの?」


「もぅパパは帰ってこないの」


「なんで?」


「パパには好きな人ができたんだって。だからその人の所にいってしまったの」


「パパが好きなのはママとあやめでしょう?パパはママとあやめがすごく好きだっていっていたよ」



「パパの一番はママでもあやめでもなかったのかもしれないね…」


そう言って母は笑うでも泣くでもなく
無表情のまま私を見ていた

幼い私につきつけられた現実はあまりにも残酷で涙すらでなかった


「ちょっとしたきっかけで愛は憎しみに変わるのよ」

母がそう小さく呟いた言葉を私は聞き落とさなかった

愛と憎しみは違うようで同じ




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