Cross
そういって私は彼を見ると
彼は悲しい顔をしていた


「こわいんだ」


「え?何が?」


「人が死ぬのが…」


―え?

言葉が見つからない私に気付き誤魔化すように
「なんてね」
そう言って彼は笑ったがすごく悲しい笑顔だった


その時
「祐介〜?」
屋上の入り口のほうから声がした


「桃花…」
彼は慌てて立ち上がった
「先に帰れって言ったろ?」

駆け寄ってくる女の人は確か教育実習の一人
男子達が騒いでたからしっている

彼女は私の顔を見るなり
「えっ…」
すごく驚いた顔をした

―?

私は少し首をかしげる


彼は慌てて
「帰ろう」と言った


「ねぇ…祐介?ちょっと…」

そう言って彼女は抵抗したが
半ば強制的に彼女の背中を押している


彼女は何か言いかけたが
ぶつぶつ文句を言いながら
渋々帰っていく

「じゃあな」彼は私に言った

「あ…うん…」


屋上をでるとき女の人が振り向いた


えっ…私今睨まれた?
< 41 / 66 >

この作品をシェア

pagetop