Cross
私はやっぱり彼にかける言葉を持ち合わせてはいなかった


…彼の言葉のいみがわからず
ただ彼をみていた


「なんてな」
ふと我に返ったように彼は私に笑いかける

「……」


彼は笑っていたが
目は悲しみに溢れていた


確信はないのだけれど
嘘ではないと思った


次の言葉を考えていると丁度よく唯が現れた


「あやめ〜もってきたよ」
そう言って私に鞄を渡した

「ありがとう」

私は鞄を受けとると


「これで全部?足りないものない?」
心配そうに唯は聞いた


「大丈夫携帯と財布さえあれば十分だから」
私は笑って答えた


「あやめ机に教科書全然はいってないの!…あっあたしもか」

そう言って唯は肩をすくめる

「よしっじゃあ行くか」
彼の言葉にうなずいた


下駄箱までは彼と唯に肩を借りて行った


「じゃあ私ホームルームあるから…また明日ね」

唯は小さく手を振った


「うん。じゃあね」
私も小さく手をふる
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