Cross
どれだけ走っただろう辺りはもう薄暗い

気づくと私は学校に来ていた


痛い足を引きずりながら屋上に向かった



屋上の手摺まで行くと私は倒れるように座り込んだ
コンクリートからはひんやりと冷たさが伝わる


「意味わかんない…」
私は1人呟く


その時

バタン!

屋上のドアが勢いよく開いた

私は誰か確認する余裕もなく温かい腕に包まれた


「何してんだよ…まじで」
彼は私を腕に抱きながら言った


突然のことで私は声も出ない

「お前足怪我してんだぞ!!」

そう言って私の両肩を掴み目線を私にあわせる

「桃華の事はごめん…あいつも悪気があった訳じゃないんだ」

彼の視線がまっすぐで真剣すぎて吸い込まれてしまいそうになる



2人の間に沈黙が流れる


彼の様子をちらっと見てみると額には汗息もあがっている


いつかもみた光景ににている


「デジャブー」私は彼に言った


「は?」
彼はぽかんとしている


「気にしてないよ」
私は言った
本当は聞きたくて仕方なかった
だけどどうきりだしていいか気まずくて茶化してしまった


沈黙が嫌で別の話題にかえる
「なんでここだとわかったの?」


彼はまた少し考えこんで

「わっかんねぇ…だけど絶対にここだと思った」


「不思議な人ね」
そう言うと彼は頭をかいて苦笑いしている




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