白い手
序章
高梨百合が高橋佐恵子と言葉を交わしたのは、入社式が初めてだった。
応募人数は相当な数だったと聞いていたので、グループ面接で顔を合わせないのはありうるとしても、百合は内定式でも佐恵子を見かけた記憶がなかった。
佐恵子はスラリと背が高く、人目を引く綺麗な顔立ちをしていた。
隣に座った百合は、会釈をしながら佐恵子の顔をみて思った。
こんなキレイな人、内定式の時にいたかしら?
50人程度の同期の中では、一際目立つ存在に思えるのに。
「あの、高梨百合です、よろしくお願いします」
入社式が始まるまでのわずかな、ざわついている時間に、百合は佐恵子に挨拶をした。
座席はあいうえお順で決められていて「高梨」の後は「高橋」で、佐恵子が百合の隣に座っていた。
「あ、こちらこそ。高橋です。高橋佐恵子です。」
口元に少し笑みを浮かべ、低めのおだやかなトーンの声で、佐恵子が挨拶を返した。
続けて百合が質問をする。
「あの、内定式の時にいらっしゃいました?なんかお見かけしなかった気がして……」
「……え、ああ、ちょっと不幸があったもので欠席したんです」
佐恵子の返事に、百合は思わず、しまった、余計なことを聞いてしまったと、いつもの自分の軽々しい悪い癖を恥じる。
「ごめんなさい、余計なコト聞いちゃって」
「いえ、大丈夫」
佐恵子が百合を目も見ずに答えた時、ちょうど壇上にマイクを持った司会らしきスーツ姿の男性が上がって来た。
応募人数は相当な数だったと聞いていたので、グループ面接で顔を合わせないのはありうるとしても、百合は内定式でも佐恵子を見かけた記憶がなかった。
佐恵子はスラリと背が高く、人目を引く綺麗な顔立ちをしていた。
隣に座った百合は、会釈をしながら佐恵子の顔をみて思った。
こんなキレイな人、内定式の時にいたかしら?
50人程度の同期の中では、一際目立つ存在に思えるのに。
「あの、高梨百合です、よろしくお願いします」
入社式が始まるまでのわずかな、ざわついている時間に、百合は佐恵子に挨拶をした。
座席はあいうえお順で決められていて「高梨」の後は「高橋」で、佐恵子が百合の隣に座っていた。
「あ、こちらこそ。高橋です。高橋佐恵子です。」
口元に少し笑みを浮かべ、低めのおだやかなトーンの声で、佐恵子が挨拶を返した。
続けて百合が質問をする。
「あの、内定式の時にいらっしゃいました?なんかお見かけしなかった気がして……」
「……え、ああ、ちょっと不幸があったもので欠席したんです」
佐恵子の返事に、百合は思わず、しまった、余計なことを聞いてしまったと、いつもの自分の軽々しい悪い癖を恥じる。
「ごめんなさい、余計なコト聞いちゃって」
「いえ、大丈夫」
佐恵子が百合を目も見ずに答えた時、ちょうど壇上にマイクを持った司会らしきスーツ姿の男性が上がって来た。