白い手
第一章
ホームで電車を待つ間、携帯で急いでメールを打った。
電車に乗ってしてしまうと次の駅まで電波が届かなくなるからだ。

今から帰るよ
おなかいっぱいだからゴハンはいらない
7時過ぎに駅に着くから車で迎えにきて

百合の家は、歩けば駅から20分程度だが、今日は疲れていて歩きたくない気分だった。
父は出張でいないと言っていたから、母が車で来てくれるはずだ。

ホームに下り列車のアナウンスが響く。
轟音とともに暗闇の向こうに列車がライトが見えた。
百合の家の最寄駅の改札は最後尾近くにあるので、最後尾の8両目が停まる位置で待っていた。

ライトが近づき、電車が入ってくる、その時だった。

視界の端にふらつく人影が写った。

警笛が鳴るのと同時に百合が「あっ」と声をあげた。

その瞬間、何ともいいようのない衝撃音がし、顔に飛んできた何かを百合は反射的に手で遮る。

ギャギャギャギャーッという急ブレーキの音が永遠に鳴り続けている気がした。

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