Leave a prove
菊池先生が指示した選手は、俺も知っている選手だ。小学生の頃、地区選抜で一緒になった経験もあり、知らない仲ではなかったから。

「長澤がボランチか…最終ラインには入らずにボランチに入って、俺を潰しに来たってやつか。なるほどなぁ」

かなり厄介な事になったな。あいつはフィジカルも強いし、何よりもサッカーを知っている男だ。知っているからこそ、顔見知りの俺でも、容赦ないプレッシャーをかけてくる事など予想が出来た。

「お前もフィジカルは強い方だが、相手もお前と同じぐらいの体格をしている。気合いで負けるなよ?」

「当然っ。誰が相手だろうが、耐えて見せるぜ」

俺は菊池先生とそう話した後、主審の合図を聞き、グラウンドの中央に集まった。

「…友里」

「はい?」

春貴が居なくなった後、隣でストップウォッチを構えている友里に、菊池が話しかけた。

「…救急箱をいつでも出せる様に準備しといて」

「えっ?」





春貴や直輝たちがグラウンドの中央に列を作り歩いていると、観客席で見ていたサクラが、隣でチョコンと座っている真紀に声をかけた。

「いよいよ試合が始まるわね。スーパーエースの春貴君は、真紀にどんな姿を見せてくれるのかしらね」

「どうなのかな…私サッカーの事、全然知らないから。しっかり見て、勉強しなくちゃ」

応援とは違った意味で気合いを入れる真紀。そんな姿を見たサクラは、少し呆れた顔をしながら、真紀に声をかける。

「勉強はあと。今は応援が先。勉強はいつでも出来るけど、応援は今しか出来ないのよ?」
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