Leave a prove
後半は、春貴のチームのボールから始まる。キックオフと同時に後ろにボールを下げ、作戦通りサイドを広く使い、ロングパスを多用しながら攻め始めた。

時折ドリブルでサイド突破を図りながらプレッシャーをかけ、チャンスを窺う。

春貴は前線でポストプレーをしながらサイドにボールを集める。中央突破ではなくサイドを使い、ゴール前でのセットプレーで点を取るために。

長澤のマークを外す為に自身が果敢にサイドの開いたスペースに走り込み、チャンスメイクをしていく。だが長澤のマークを容易に崩すのは難しく、俺の下にボールを集めても、シュートどころかドリブルをする事もままならない状況だった。

だがそんな中、思わぬところで転機を迎えることになる。

サイドからの展開でのセットプレー。サイドからのセンターリングが、ディフェンスの裏をつき、フリーでボールが通った。

そこに走りこんでいた俺の相棒でもあるトップの一人の岸田にボールが渡り、そのままダイレクトにシュートを打つ。そのシュートが綺麗にボールネットに納まったのだ。

ニヤポストに詰めていた俺に引き付けられたのかはわからないが、一瞬の隙が生んだチャンス。それをしっかりとモノにした岸田のファインプレーが生んだ先制ゴールの瞬間だった。

待ちに待った瞬間であった先制ゴールに、俺達の学校の応援席の方からは盛大な歓声が聞こえてきた。それと同時に俺達は、ゴールを決めた岸田の元に駆け寄り、祝福の声をかけた。

ベンチの方からも声援が聞こえていた。監督の菊池は俺らの方に親指を突き出し満面の笑みを浮かべ、ベンチを温めている選手たちは総立ちで俺らの方にこぶしを突き出している。

友里はと言うと、胸の前で無数の拍手をしながらこちらの方に視線を向け、目を細めながら喜んでいる。

そんな中、一人寂しそうに喜んでいる男が一人…ディフェンスのラインも上がっていたので、一人待ちぼうけを食らったような位置にいるお祭り男は、精一杯喜んでいるものの、少し滑稽に見えるのは気にしないでおこう。

何はともあれ、先制点は奪取した。流れが変わった今、守りに転じず、このままの攻めを見せて勝負を決めてしまおう。
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