Leave a prove
その頃観客席では、お祭り騒ぎの様に盛り上がっていた。

試合の展開を詳しく理解するのは、素人には非常に難しいものだ。どちらが優勢かわからない状況が続いていたので、この先取点は非常に分かり易く優劣を確認させてくれたのだ。

点数を決めたのが春貴ではなかったものの、サクラは真紀。それに拳までもが点数が決まった瞬間は、歓喜の声をあげていた。

サクラに関して言えば、席から立ち上がり、大きな歓声を春貴達の方に投げかけていた。

「やったね真紀っ!これで勝ったも当然だよ」

「うんっ。やったね」

勝負は終わるまでわからない。でも後半を迎え、接戦をしていた状況での先取点は、勝負を決める上では大きなプラスだ。

二人がそう言って喜ぶのも無理はない。

「春貴が決めれず、2年生が決める…か。世代交代が始まったな」

拳は少し皮肉を交えた様に、そう言葉を述べた。

「なにそれっ!アンタは素人なんだから口出さない。春貴はあのゴツイ人のせいで、良い動きが出来ないの!」

「ゴツイ人?あの10番の男か?」

サクラは、ゴツイ人の一言で長澤をかたずけてしまった。拳はサクラの言っていたゴツイ人に視線を送ると、長澤に視線を送る。

長澤は少し落胆している様に見えなくもないが、真剣な表情で周りの仲間に声をかけていた。その様子からは諦めといって雰囲気は少しも感じられない。

「そうよ。前半も春貴がシュートを打とうとしたら、足を引っ掛けてファールしていたし…なんか見ていてヒヤヒヤする様な事をするのよね。アイツ…」

サッカーのクリーンな所しか知らないサクラは、長澤が行ったようなプレーが気に食わなかったのか、少しムッとした様子でそう話した。

その点に関しては真紀も同じ思いなのか、サクラの言葉に無言で頷いて見せる。

「ふーん…まぁサッカーのことは知らんが、あのゴツイ男も負けたくないんだろう。真剣になればなるほどな…」

二人の考えとは違う拳の考え。それは真剣勝負という点での考えだ。

負けるぐらいなら何でもやってやる。そんな事が勝負の世界では当たり前だという考えだ。
< 122 / 141 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop