Leave a prove
長澤の気持ちを拳は理解出来るのであろう。そして拳は、何となくこのまま試合が終わらない様な気もしていた。

長澤がサクラの言うような人物なのであれば尚更、このまま引き下がる奴だとは思えないのだ。

「真剣…かぁ。春貴も真剣だよ…負けたくない気持ちは負けてないよ」

ここ最近は毎日のように春貴と連絡を取り合っている真紀。それは春貴の彼女という事もあり、春貴がこの大会に向けての強い気持ちを肌で感じていたからの言葉であろう。

負けるわけにはいかない。全国大会に行くことは、春貴にとっては通過点に過ぎないのだ。その通過点を通るだけでも至難の事なのだ。

真紀は春貴の気持ちを、自分に投影しているかのような気持ちになった。負けたくない…このまま何事もなく勝ってほしい。

今まで感じたことのないような複雑な気持ちを抱えながら、真紀は試合の行く末を見守っていた。



とりあえず先制点は取れた。これからの20分は相手も死に物狂いで攻めに転じてくるはずだ。

まぁ俺としては、攻めに転じてもらえれば、こちらも付け入る隙が多くなるんだがな。引いて守りに転ずるのも悪くない。

でも引いて守り切るだけでは、物足りない。俺の仕事はこれから相手にプレッシャーをかける為の追加点を決めることだからだ。

相手ボールで試合が再開された時、やっぱり相手チームは猛攻を仕掛けてきた。

今までディフェンス気味に布陣を引いていた相手チームは、かなり攻撃的に枚数をかけてきたのだ。細かいパスワークで中央をかき乱しながら、サイドを使いスペースを作りだそうと懸命に試合を組み立て出した。

俺たちは、そんな相手のペースに合わせないように、体力をフルに使いながらのゾーンプレスで相手のミスを誘うようにプレッシャーをかけた。
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