Leave a prove
体力勝負なら負けない自信はあったし、これに勝ったら全国への切符を手に入れることが出来るのだ。普段の二割増しの力を出せるってもんだ。

案の定そんな簡単に中央のからの突破を許すわけもなく、相手選手の小さなトラップミスから俺たちはボールを奪取し、カウンターに転じた。

俺は前線でボールを待ち構えていたので、長いボールを蹴ってもらい、そこから一気にキーパーへ一直線に攻め込んだ。

ディフェンスは上げ気味に布陣を引いていたので、そこの間を縫って一気に抜き去る。長澤の位置は知らんが、攻撃に参加していたので、俺とは距離をとっていた。

遮るものは何もない。

俺は熱い日差しと吹き抜ける風をその身に感じながら、一心にゴールを目指した。キーパーは俺との一対一になるのを想定して、まだ俺の方には詰めてきていない。

確かにまだ距離はあるし、不用意に詰めてきても、ループシュートを打たれて終わりなんて事も考えられる。

英断だな。だが俺も馬鹿ではない。

そんな簡単にシュートは打たない。近づけば近づくほど、シュートコースは広くなるのだからな。

ゴールまで距離でいえば約25メートル付近に差し掛かり、キーパーは俺の方に詰めてきた。それを視界に確認した俺は、少しドリブルを緩め、シュートモーションに入る。

すると俺の横から凄い勢いで迫る男が一人居た。

それは長澤だった。長澤は、中盤でボールを回していた一人なのに、ディフェンスを抜き去り、俺も元まで駆けつけていたのだ。

長澤は俺の腕を掴むと体の前に入りこもうとした。だが俺はそんな長澤の脇腹を肘で押しやり、無理やりポジションを確保し、俺は脚を振り上げた。

軸足である左足に力を込め、長澤のプレスで不安定になりそうな上半身を必死に維持し、最高の形で右脚を振りぬくために。

そして俺はシュートを振りぬいた。ボールはキーパーの頭上を越え、ゴールに一直線に進んでいく。

入りそうな軌道のシュートだったのだが、ボールはボールポストの上面をかすめ、ゴールに入ることはなかった。
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