Leave a prove
俺もガキだな。友里と同じ立場なら、俺も止めていたと思う。

でも接戦が続いている状況で、俺のマンマークを外れた長澤が、攻めに集中しだしたら、かなりヤバい展開になりかねない。

それぐらい長澤というプレイヤーは危険なんだ。

俺は無理やり試合に出ようと起き上がると、菊池先生がすでに行動に移しているところだった。

先生は俺に何の確認もする事なく、交代を告げる為に審判団に書類を提出している所だったのだ。

「監督っ!ちょっと」

「お前は交代だ春貴。それと無理かどうかを決める権限は監督にあるもんだ」

菊池先生はそう言うと、すでに試合が再開されているピッチで、ボールが外に出たところで、正式に俺の交代が告知された。

こうなってしまっては、俺がどうこう言ってもどうしようもない。

諦めた俺は、その場から立ち上がろうと片足で起き上がると、友里が肩を貸してきた。

「一人じゃ無理よ…さっきはごめんね」

「何で友里が謝るんだよ。謝るのは俺の方だ…悪かったよ」

痛みはあるが、息は整い、頭も少しは冷静になってきた。さっきの俺の醜態を改めて思い直し、俺は素直に友里に謝った。

「それと友里の華奢な体じゃ俺は支えられねぇよ。監督っ!肩貸してくれ」

友里と体が密着するのは少し恥ずかしい俺。それに汗も大量にかいているから、かなり汗臭いだろう…。

そんなこんなで監督を呼びつける俺は、相当痛い奴だろうな。

「おいおい…監督を何だと思ってるんだ?」

そんな事を言いながらも俺の肩に腕を回す菊池先生もかなりの変わり者だ。ここは怒る場面なのだからな。

「俺が肩を貸しますよキャプテン」

そんな様子を見ていた後輩が、俺に肩を貸すどころか、俺を背負いだした。正直こっちの方が左足の負担は減り、楽なのだが恰好が悪い。

だがまぁ…仲間の思いやりを素直に受けるのも悪くないな。

俺は素直に後輩の背中に身を預けると、ベンチまで運ばれて行った。
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