Leave a prove
友里は急いでいるからと言うと、そのまま保健の先生を連れて、観客席を後にして行く。その姿を見送った後、サクラは少し口調を荒げて声を発した。

「ほんっとあのゴリラ野郎ムカつくわね。春貴に怪我を負わせたのも絶対にワザとよ…文句の一つでも言ってやろうかしら」

長澤はごつい奴からゴリラ野郎に昇格したようだ。

「ほぉ…俺も付き合ってやろうか?」

拳もその気があるのか、そう話してきた。変なところで意気投合しようとしている二人を、真紀が必死に止めだした。

「止めてよ二人ともっ。それじゃやってる事あの人と同じだよ」

「じゃあ真紀は、あの男を許せるの?もし足が骨折していたら、全国大会も出れなくなるかもしれないのよ?」

サクラの言葉に返す言葉が出ない真紀。正直真紀も長澤には腹が立っていた。

苦痛に顔を歪ませる春貴の姿や、自分で歩けないほどの怪我を負わされた姿を見ていたからだ。

「許せないけど…でもダメ。取りあえず試合を見ようよ。まだ終わってないんだし」

話題を変えたかった。そうでないと真紀も、サクラ達の意見に強く否定できなくなりそうな気がしたから。



友里は試合を観戦している春貴の下に保健の先生と共に姿を現した。

「神崎君、保健の先生連れてきたよ」

春貴はベンチに座り、腫れている左足を地面に付けないように気を使いながら、真剣な表情で試合を見ている。

というのも、試合展開は春貴が抜けて事で、劇的に変化が起きていたからだ。春貴をマンマークしていた長澤が全線に上がり、攻撃主体で攻めに転じていたのだ。

長澤のチームは長澤がチャンスメイクをする事で攻撃の種類が増える。要は縦のパスを長澤を起点に通り易くなるのだ。

というのも、長澤が果敢に切り込みスペースを自ら作る事で、チャンスの幅が広くなり、あまつさえゴール前に良いパスを通すのだ。

それをやられると、フラットスリーの布陣を引いている俺らのチームは部が悪くなる。というのも、三枚しかディフェンスを置いていないので、オフェンスにマースを付ければ、それだけスペースも多くなってしまうのだ。
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