Leave a prove
春貴の奴、相当やばいようだな…。

緊迫した試合展開でも、春貴の怪我の具合が気になった俺は、ちょくちょくベンチの様子を観察してそう思った。

保健の先生が怪我の具合を確認していたし、友里のあの表情…あいつは意外に顔に出やすい奴だから、俺には分かってしまう。

あれは普通の怪我ではないのだということにな。

どれだけの怪我なのか分からないけど、これ以上心配しても仕方がない。試合が終われば嫌でもわかってしまうことなのだからな。

俺は後ろから試合展開を観察しながら、この先の展開を考えた。

まず長澤のゲームメイクは圧巻だった。自ら中央に切り込み、スペースをかき乱す様にしてスペースに鋭い縦パスを何本も入れてくる。

それに対処しようとして俺がゴール前を開けると、すかさずシュートを打ち込んでくる。なんとかセーブは出来ているが、ちょっとしたミスが失点に繋がりかねない状態だ。

このままではまずい。

この状況を打開する二つの方法があるんだが、俺はどれを選ぼうか…。

守るか攻めるか。

「へっ…攻撃は最大の防御って言うしな。これで行くかっ!」

俺はある選択をした。相手が攻めてくるならそれも上等。受けて立ってやろうじゃないか…。

「大吾っ!ラインを上げろ!」

スイーパーの位置に居る、俺らと同い年の味方に俺はおう言葉をかけた。大吾はそんな俺の言葉を聞くと、正気を疑うような表情を俺に見せた。

「俺がディフェンスのケツをやる。お前はラインの統率と、オフサイドトラップをバンバン狙って行け!こっちにこぼれた球は俺が死んでも阻止してやるからよ」

このままでは防戦一方である。だったらオフサイドラインを上げて、スペースを極端に消してやれば良いんだ。

その分危険も増すが、それはお互い様ってやつよ。こうすればカウンターも狙いやすいし、敵もそう簡単にはパスが出せなくなる。

大吾は俺に返事を返すと、すぐさま両サイドのディフェンスよりも少し低い位置に居たポジションを上げ、綺麗な横一列を作った。そうすると相手のオフェンスも大吾の位置に合わせ、ラインを下げる。

なぜならそのままの位置でボールを待っても、オフサイドになってしまうからだ。
< 134 / 141 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop