Leave a prove
俺はロングシュートに対処できる位置を計算しながら、ペナルティーエリア内を移動していた。こっちがボールを支配している時は、ペナルティーエリアの外に出て、ディフェンスのパス回しに参加する。

相手は死ぬ物狂いでボールを取りに来るので、無理にはボールを回さない。危ないと思ったら、前線に張っているフォワードにロングボールを打ち込み、ラインの統率の時間を作る。

それにサイドを多様することで、相手のスタミナを奪う効果も期待できる。

うちのファンタジスタがいないこの状況で、どれだけのプレーが出来るのかも少し調べておきたいから、サイドからの展開も考えて、少し厳しいスペースにボールを回して、フォワードの状態を確認する。

ただでは終わらせない。俺たちにとって、この先がスタート地点なのだから。

でもそんな簡単に俺の思惑どおりには話が進まなかった。

時間はあと7分もあれば終わるであろうこの時間帯に、長澤は俺の考えを読んで、すぐさま指示を飛ばしているようだった。

さすがに対処が早い。トップの2人を使って、ラインをかき乱す指示をだしているようだった。オフサイドラインのギリギリで下がったり上がったりしてオフサイドラインの修正を妨げているのだ。

オフサイドトラップは相手のオフェンスの位置を読んで、ラインを調整しないといけないので、過度の撹乱をされると、少し手を焼いてしまう。

そしてその一瞬のタイミングを見て鋭いパスを打ち込むことが出来るのがこの長澤という男のいやらしいところだ…。

決定的なチャンスは数えきれないチャレンジの中で生まれてくるも。そしてこの試合で、そのチャレンジが最高の形で報われる様なパスが通ってしまう。

オフサイドはギリギリ取れるか取れないか。

そんなギリギリのタイミングで出されたパスは、副審の判断により、オフサイドではないと判断され、決定的な1対1の状況を作り出してしまう。

ディフェンスは虚を突かれて、完全に守りに参加出来る状態ではない。だからこの状況は俺が身を呈して止めないといけない。

俺はある程度この展開を読んでいた。少なくとも一回はこの状態に陥ると…。

よく知らない相手のフォワードは自信を持って勝負を挑んでくる。俺は長澤のパスが出た後すぐにフォワードの前に躍り出るためにダッシュをしていた。
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