Leave a prove
冷静な判断であると俺は思う。1人で3人を見るのははっきり言って無理な話だ。なのでどこかで勝負をかけて一発勝負に出るのも英断である。

だが相手の動きを察知した見方はダイレクトでゴール前にパスを出す。そこにディフェンスラインを計算して飛び出した岸田がそのボールを受け、キーパーと1対1の状況になる。

岸田は冷静にそのボールをサイドネットめがけてシュートを打ち、そのボールは相手ゴールを揺るがす結果に繋がったわけだった…。

試合終了までまだ時間はあるのだが、実質的にここが勝負の終結であった。

その後の展開は、転々と時間が流れるように進み、両者とも特に見せ場もなく試合が終了した。

「やったーっ!全国だ!」

ピッチ上に居たみんなは、互いに抱き合うように健闘を称え合い、ベンチに居た俺たちも笑顔で握手や抱擁をし合う様に喜びを分かち合っていた。

菊池先生も厳しい表情を消し、笑顔で皆に声をかけている。友里はというとよほどうれしかったのか、口元を手で覆いながらうっすらと涙を浮かべている。

そして俺はというと、当然勝ったことはうれしかった。でもなぜかスッキリとしない靄みたいなものが俺の中にある。

全国へ行ける…。

なのに。

「…先生。病院連れて行ってもらえますか?」

時間が経っても痛みが引かない俺の左足。取れあえずはこの足をどうにかしないとな。

「大丈夫よ。もう良いのね?」

俺は一回うなずくと、その場に立ち上がる。

「神崎君…私も付いて行こうか?」

俺の話を聞いていたのだろう友里が、そう聞いてくる。

「大丈夫だ…先生も付いてきてくれるし、問題ねぇよ」

これ以上友里に迷惑はかけたくない。それに俺はガキでもないしな…。
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