イジワルな恋人
バイトが終わった後、待っていてくれた亮と一緒に夕飯を食べる事になった。
「おいしい! けど……ねぇ、あたし達ういてない?」
亮があたしを連れてきたのは、とても高校生が来るようなお店ではなかった。
一流までとはいかなくても、OLの間で話題になるようなオシャレな雰囲気のレストランで。
「あたしなんか制服なんだし……」
あたしの言葉に亮が不機嫌そうに口を開く。
「おまえが高くないところがいいって言ったんだろ?」
「……やっぱり亮っておぼっちゃまなんだね。
あたしはファミレスとかファーストフードとかのつもりだったのに……」
金銭感覚の違いに呆れながら、目の前の前菜を眺める。
高校生同士でまさかコース料理を食べるなんて夢にも思わなかったし。
まぁ……すっごくおいしいしいいんだけど。
文句を言いながらも、食べ進めていると、微笑みながら見つめてくる亮に気付いて、照れ隠しに会話を探す。
「そういえば、ケータイうるさいから嫌だって言ってたのになんで買う気になったの?」
「……別に。今まではなくても連絡とりたい奴もいなかったからよかったけど、今は……」
亮が言葉の途中で口を閉じる。
待っていてもなかなか先を言わない亮に、あたしはその先を催促する。
「今は、何?」
「……さぁね」
身を乗り出して聞いたあたしを、亮は口の端を上げて軽くかわす。